読者の皆様こんばんは~アッキーです
土曜日の夜をいかがお過ごしでしょうか?楽しんでいますか~
さてさて今回も前回に続き、シンセサイザー界の巨匠”冨田勲”先生の出演した番組『NHK訪問インタビュー』の第2回の解説を行いたい思います
この番組は前回お伝えした通り、1983年に全4回で放送された番組で、現在DVD等のソフトとしては一切販売されていません(残念!)
この貴重な番組をぜひ全国の。。。いえ世界の皆様に知って頂こうと思いまして、番組の内容を余すことなく完全解説したいと思います
では、早速行って見ましょう
◆『訪問インタビュー』第2回 音の響き・音の色2 [1983年2月8日放送]◆
まず第2回目の最初は、いつもの通り冨田先生制作の”バッハのインベンション13番”から始まります
ちなみに2回目のインベンションは”オルゴール風の音”になっていて、とても綺麗で繊細な音がします
オープニングの映像は、先生がパソコンの前に座って、キーボードを叩いている所から始まります
今回のインタビュアーも前回同様”斎藤季夫”さんです
まず冒頭すぐに、斎藤さんが今回のインベンションが”オルゴール風の音”である事を説明してから。。。『冨田さんがどういう感性や感覚で身体を通して、冨田さんの音が出てくるのか教えて下さい』と直球の質問をしています(自分も知りたい!!(笑)
そして続け様に『音に対する興味はいつ頃から芽生えたのですか』と言う質問に対して先生がこう答えています
『5才か6才の頃に、音楽よりも”音そのもの”に興味を持ちました。
その頃北京に住んでいまして、よく親父が旅行に連れて行ってくれました。
それで、今でも一番印象的なのは、お城の廃墟みたいな所に大きな塀があって、そこの近くに立たされて、親父が歌をうたいながら自分から離れて行くと、いろんな反響の仕方をして”音場”の不思議さを感じました。
それからコップを耳に当てて”ゴー”と言う音を聞いたりして遊んでいました』
同時に字幕も流れます。。。
『昭和7年東京生まれ 慶応義塾大学文学部卒 学生時代から作曲の仕事へ シンセサイザーによるデビュー作「月の光」は国際的に評価され 現在世界のトップ・シンセサイザー奏者として活躍中』
“世界のトップ・シンセサイザー奏者”ってとっても良い響きですよね~(笑)
冨田先生は実は幼少の頃は、中国の北京に住んでいたんですねっ
お父さんとの懐かしい想い出と共に、その時感じた”不思議な音”の体験が浮かんでくるようです
『小学校の頃は、当時は戦争中だったので、軍艦マーチとか行進曲等しか耳にすることが出来ませんでした。
そして終戦後、進駐軍が日本に来た頃、いろんな音楽が海外から入って来ました。
そこで当時の、今で言うFENの様なラジオ放送で“20世紀の音楽”として流れていた”ストラビンスキー”とか”ドビッシー”とか”ラベル”等にのめり込んでいきました』
『その時聴いた管楽器のオーケストレーションは、一つ一つの楽器の特性を生かした編曲がされていて、そこにすごく興味がありました。
当時”平尾貴四男”先生や”小船幸次郎”先生に付いてオーケストレーションを教わる時にも、どうして音の重ね方によって、こう言う音響が出るのかと言うことを教えて欲しかったのです』
『自分は単体の楽器のメロディーにはあまり興味が沸かず、どちらかと言うと、同時に楽器がなる時の”音響的”な部分にすごく興味が沸きました。
つまりオーケストラで”ジャン!!”と言う音を鳴らしたとしても、ベートーベン、ワグナー、ストラビンスキーでは全然音が違う、音の重ね方が違うんですね。
そう言うオーケストレーションを学びたく、何人かの先生に頼んだけど、皆さんが”まず基礎のバロックから始めて、モーツァルト、ベートーベンに行きなさい。そして最後に20世紀の音楽のオーケストラを勉強しなさい”と言われました。。。』
『自分は、昔のオーケストラは、なんか”白黒”のような気がして全然興味がなかった。
それに比べて、ストラビンスキーとかドビッシーとかラベルは、油絵のような色彩豊かな音がするんですよ。
だから、10年前にシンセサイザーを導入したんです。
普通の楽器は形が決まっていて、音も変えることが出来ません。
シンセサイザーは、元の楽器自体を自分で創造して自由な音を出す事が出来ます。
今まで作曲をして来た中で、既製の楽器には無い音が必要な時がありました。
自由な音で作曲をしたかったのです』
『そして大阪万博で”モーグ博士”の作ったシンセサイザーを初めて見て、何かよく理解は出来なかったけど”自分には必要な物だ”と直感で思いすぐに輸入しました。
そして家に届いてからいろいろ試しましたが、最初はなかなか音が出なくて困りました。
普通の楽器には、楽器としての説明書がありますが、このモーグのシンセサイザーにはそれが無く”電気機器”としての説明書しかありませんでした。。。』
『例えば”オシレーター”と言う、音の元になる部分ですが、説明書には”コントロールインプットと言うのがあって、そこにかけた電圧が1Vアップすると音の周波数が倍上がる”等と言う説明しか書いてありませんでした。
その当時はシンセの指導者が全くいませんでした。
シンセサイザーを設計した”モーグ博士”自身も”自分は音を作る時に必要であろうと思う、ありとあらゆる物を揃えただけです”と言われていました。
つまりシンセの設計者が音を自由に作れた訳ではなく、音を作る機械をミュージシャンに提供して、後は個々のミュージシャンで音を作って欲しいと言う事なのです。
ですが、そう言った音を自由に作る事が出来る楽器は、自分のイメージした物と完全に一致していました』
続けて斎藤さんが聴きます。。。『そのシンセサイザーという物が、20世紀の音楽の中で表現されている”音の積み重ね”や”縦割り”等を、鮮やな音で自由に自分で出せると道具だと思ったのですか?』
そして先生は答えます。。。
『音色と言うのは”縦の線”のものだと思うのです。
シンセサイザーが無かった頃から、僕はNHKの番組のテーマ曲をいろいろ作っていましたが、よくバイオリンならバイオリンの音をそのまま使わず、フィルターをかけたり、エコーをかけたりして、生の楽器とは違う音に加工するように担当のミキサーの人に頼んだりしていました。
そうすると中には怒り出すミキサーの人もいたんですよ。
そのミキサーの人曰く
“自分は生の楽器を綺麗な音で録るためにここに来ているんです。こんなに音を加工したら自分は責任を持てません”
と怒られた事が何度もあります。
元々自分は、人間の出す生身の音があまり好きじゃないんですよ。生身で迫ってくるバイオリンの音や人間の声などがなんか嫌なんですよね』
ここで字幕が入ります。。。
『冨田さんは昭和49年に制作した「月の光」以来、ストラビンスキーやホルストの曲を電子音楽化し海外でも高い評価を得てきた』と。。。
続いて斎藤さんが質問します。。。
『ラベルやストラビンスキー等の作曲家達の作った曲を、シンセサイザーを使って変えようとする辺りの事を教えて下さい』
『クラシックの音楽と言うのは、時代が変わって新しい楽器が発明されると、その時代の楽器の音で置き換えられていきます。
例えばベートーベンとモーツァルトの時代と、現代のピアノの音は全く違いますよね。
ベートーベンのシンフォニーにしても、作曲された当時はホルンの音域も狭かったのですが、楽器が改良されて行くにしたがって、そのアレンジも広い音域へと変わって来ています。
楽器自体も、例えばフルートなんかは、昔は木管だったのが全部金管に変わってきていますね』
『自分はどちらかというと、作曲者と言うより演奏者としての面が強いんじゃないかと思います。
だから、学生の頃ストラビンスキーの”春の祭典”や”火の鳥”を聴いた時、自分だったらこう言う音で演奏してみたいと言う気持ちがありました。
特に”春の祭典”は何百人と言う人達で演奏されますが、自分はそれを一人で演ってみたいと思っていました』
『実は今度のレコード中で、自分はコンダクター(指揮者)になって”プラズマ・シンフォニー・オーケストラ”を率いて演奏しています。
“プラズマ・シンフォニー・オーケストラ”と言うのはここにあるシンセサイザー達の事です。
コンサートホールの感じを出すために”デジタルエコー”を使っています。
そのエコーを”コンサート・ホール”と呼んでいます。
今まで演奏者は、鍵盤を使ったりフルート等の楽器を使わなくては音楽をやっている事にはならなかったけど、演奏する手段はどうであれ、最終的に音楽になっていて自分の精神的な物が入っていれば良いと思います。
演奏するのにマイコンやコンピューターを使って良いんだと思いますよ』
『人間と他の動物が違う所は、道具を使って生きて行く所だと思うんですよね。
石器時代に石の斧を振り下ろした瞬間から、人間というのは道具を使って生きる生き物だと思います。
ですから、生楽器の演奏が最高で機械を使うのが良くないとは言えないと思います。
機械が主役で機械に人間が振り回されて、出来上がった音楽に自分が存在していない事が良くないのであって、その機械自体が人間に対して忠実に動作する機械であれば、絶対に結果的に自分というものが出てくるんだと信じています。
なかにはコンピュータがあれば作曲までしてくれて、最後にはミュージシャンもいらないとか、コンピューターが名曲を生み出してくれると言う錯覚を起こしている人達もいますが、やはり機械は機械でしかないんですよね』
ここで、エンディングのバッハのインベンションが流れ、今回のインタビューは終了となります。。。最後の方で先生のメインのラックマウントの機材を、カメラマンの方が流して撮影していましたので、3枚に分けて載せておきます
おそらく機材に詳しい方には、何の機材か分かるかと思います
ちなみにこのエンディングのインベンションはまた音色が違って、少しハープシコードを幾層にも重ねたような豪華な音になっています。ぜひ皆様に聴いて欲しいですね~(笑)
さて、今回もとても長くなってしまいましたが、出来る限り本編に近いように原稿を起こしてみました
このブログを書くのにもうすでに5時間程経っていますが、これを読んでくれた方が何かの参考になったり、喜んでいただけたら嬉しいですねっ
では、また次回も『訪問インタビュー第3回』を完全解説して行きたいと思います
もう少しで朝になってしまいますが、みなさん日曜日を存分に楽しんで下さいねっ
では、アッキーはまた作曲に戻りたいと思います