オッドアイ猫読者のみなさま、おはようございま~す!アッキーです!爆笑

連休の最終日、皆様はどのように過ごしていますでしょうか?

 

 

オッドアイ猫さてさて、今回の訪問インタビューは第3回目となります。

前回は、冨田先生の幼少期や戦時中のお話し、シンセサイザーやオーケストラの曲に関する、いろいろなお話を聴くことが出来まして、自分も勉強になりました♪

 

さてこの第3回目ではいったい何を話して下さるのか、と~ても楽しみですねっ(笑)

では、早速『冨田勲・訪問インタビュー第3回』を一緒に見てみましょう~!

 

◆『冨田勲・訪問インタビュー』第3回 音の響き・音の色3  [1983年2月9日放送]

 

オッドアイ猫まず第3回目のスタートは、冨田先生のスタジオの入り口からカメラが室内に入っていくという映像で始まります。

スタジオの入り口は割と狭く、左側に大きなファイル棚と、右側に音声ケーブルが多量にぶら下がっているハンガーがありますねっ。

 

今回のイントロのバッハのインベンションは、木琴と鉄琴のような二つの音を使っていて、それがうまく絡み合って旋律を奏でています。

インタビュアーはいつもの”斎藤季夫”さんです。

 

入り口を入ってすぐの所に”Roland Jupiter-4″が立てかけてあり、更に”MC-8″のセットと”Jupiter-8″がスタンドに乗せてありました。

 

カメラが中に入ると、左手の隅の高い所に、いくつかのラッパのアサガオの部分が設置してあります。

 

それを見た斎藤さんが、早速。。。

 

『いろいろな電気的な機械の中で、このラッパが目に付くのですが。。。』

と質問をします。

 

 

すると先生が。。。

 

『これは普通のラッパなんです。トランペットで言う根元の唇の当たる部分に、強力で小さなスピーカーを取り付けているんですよ。

それで、何かラッパ的な音を出してみようと、実験で作ってみたんです』

 

斎藤

『何かそういう、特別な音が欲しくてと言うことですか?』

 

冨田

『そうですね~例えば普通のラッパですと、高い方とか極端に低い音は(人間が吹くと)限界があるのですが、このスピーカーを使ったシステムでは、どう言った音が出るのかという実験です』

 

斎藤

『今でも使っているのですか?』

 

冨田

『そうですね、まだあまり使っていませんけど、時々実験に使いますね』

 

オッドアイ猫同時に前回と同じく、冨田先生のプロフィールの字幕が流れます。。。

 

『昭和7年東京生まれ 慶応義塾大学文学部卒 学生時代から作曲の仕事へ シンセサイザーによるデビュー作「月の光」は国際的に評価され 現在世界のトップ・シンセサイザー奏者として活躍中』

 

そして、今度は斎藤さんが、モーグシンセサイザーの設置されている壁の方に向かって質問します。

 

『ここには、オーケストラの楽団員がいるとおしゃっていた所ですが。。。』

 

 

オッドアイ猫すると先生が、モーグのシステムを指しながら。。。

 

『これが私が最初に、10年位前になりますけど1枚目のレコードから使っているシンセサイザーです』

 

やあ~、このモーグのシステムは本当に壮観ですね~~!

 

本当に”欲しいっ!”の一言です!(先生の使っていた物が欲しい!なんて、みんなが思っていることを、一応代弁してみました~~笑)

 

オッドアイ猫続いて冨田先生が、システムに付いてさらに詳しく説明してくれます。

 

『最初はここの4つだけだったのですが、あとからこの部分を買い足しましてね~。

 

れはね、結局いろんな道具が箱に収まっていると言う事で、例えば、これはこれで一つの役割をするんですね』 

と、一つのモジュールを手にしながら説明をしています

 

 

冨田

『こう言った小さいモジュールが、この大きなラックに並んで入っているだけなんですよ。

 

そして前面のコードでそれぞれのモジュールを接続して、自分の好みの音に近づけて行くんですよ

 

斎藤

『10年前に購入された物もいまだに使っているのですか?』

 

冨田

『はい、そうですね~意外と最近のロックミュージシャンでも使っている人がいますね』

 

斎藤

『使い慣れた物が良いのですか?』

 

冨田

『そうですね、70年代はこれでどっぷり浸かってきたようなものですから』

 

オッドアイ猫そして斎藤さんが、奧にある大きなキーボードを指しながらこう聞きます

 

斎藤

『そちらにあるのは新しいものですか?』

 

冨田

『そうですね、これはもう80年代に現れたデジタルシンセサイザーですね。

 

これとまたこちらにもありますけど、これは完全にコンピューターです』

 

 

オッドアイ猫この時冨田先生が指していた”デジタルシンセサイザー”と言うのは、かの有名は”フェアライト(FAIRLIGHT) CMI”です!

 

簡単に説明しますと、日常的にある様々な音をサンプリングして本体に取り込んで、それを音階にして自由に弾いてしまうと言う、その当時としては画期的であり、またとてつもなく高価な楽器でした~!

 

 

鍵盤で、演奏とコントロールをして、細かい波形の操作は奧の緑色のモニター上で行いました

 

オッドアイ猫そして、話はこのフェアライトについての説明に入って行きます。。。

 

斎藤

『ここにあるのが、今一番新しい機械ですか?』

 

 

冨田

『そうです、これが80年代になって現れたデジタルシンセサイザーで、コンピューターの塊みたいなシンセサイザーです。

 

これが出てきたために、70年代に自分がさかんに言ってきた”シンセサイザーと言うのは音をゼロから作る事が出来る”絵で言うとパレットみたいな物です。。。と言う概念が、このデジタルシンセが現れたために、ちょっと崩れてきたのです。

 

このシンセは音を創るだけではなく、現実の音を覚えてしまうのです。』

 

そして先生が。。。

 

『例えば、あのーこのコップのですねー』

 

と言いながら、事前に用意してあったコップを左手で持ちながら、スプーンで”カーーン!!”と叩きます(すご~~く良い音!!笑)

 

 

そして微笑みながら。。。

 

『これでももう、楽器になっちゃうんですよ』

 

そして持っていたコップとスプーンを置いて

 

『これでですねーこの現実の音を覚えちゃうんですよねっ』

 

と鍵盤を弾いてみると、さっきの音とそっくりな音が出ます。

 

さらに。。。

 

『それで、ただ覚えるだけでなく、一瞬にして音階にしてしまうんですよ』

 

と、ドレミファソラシドレミファ。。。と音を弾いていきます♪(上にMC-4があるぞっ!笑)

 

 

オッドアイ猫先生は1オクターブ半位、音階を弾いていますが、どうも波形の長さも一瞬で伸張してくれるようで、全く違和感なく綺麗なサウンドを奏でてくれています。

 

冨田

『これは、コンピューターが一瞬にして音階にしてしまうんですよ』

 

斎藤

『これは、始めにマイクで覚えさせて行くんですか?』

 

冨田

『そうですね、音の波形を記憶させて、後はコンピューターが音階に演算するんですよ。

 

と言うことは現実にある音、例えば犬の鳴き声でも”ワン!”と一つ音を録っておいて、それを音階にして、犬に歌わせちゃうとか、小鳥に歌わせちゃうことが可能になってきたのです。

 

レスピーギの交響詩”ローマの松”の最後の方で、ナイチンゲールが鳴く音を流す場面があるのですが、もしレスピーギがこのシンセを知ってたら、ナイチンゲールにそのメロディーそのものを歌わせていたと思います』

 

『それで、このシンセは波形を見ようと思えば波形が見れるんですよ』と言いながらブラウン管モニターに付いているペンを持ちながら、キーボードを叩き波形を表示させてくれます音譜

 

 

冨田

『これが、今のコップの波形です』

 

そこに表示された緑の山脈みたいな波形は、レトロ感満載で超カッコイイですね~~!(笑)

 

オッドアイ猫その波形をみながら先生が説明してくれます。

 

『この手前が叩いた瞬間、そして奥の方に伸びていきます。この波形の時間の変化を表しているのです。何かインスタントラーメンみたいですね』 (アッキーもそう思います。笑)

 

『今この表示では斜め上から見ていますけど、真正面から見ることも出来るんですよ。』

 

と言いながらモニター上のコマンドをなぞり、画面の表示が変わります。

 

そして、表示が真正面から見た画面に変わった所で

 

『この波形の一つ一つの変化も見ることが出来るのです』

 

と言いながら、また画面表示を変更させます。

 

 

今度は現在のコンピューターでもお馴染みの、横スクロールの波形表示です。

 

もちろん、今の時代とは比べものにならない位簡易な画面ですが、それでも、この時代にブラウン管画面で、これだけの波形情報を一瞬で表すことが出来たと言うのは、フェアライト恐るべし!と言う感じですねっ。

 

『ここが叩き始めで、この後、だんだん音が小さくなって行くのを見ることが出来るんですよね』

と言いながら画面を操作して行きます

 

『ところがね、この機械の面白いところは、自分で波形を描くことが出来るんですよ。

 

つまりレコードの溝をよく見ますと、音の波がギザギザに見えると思いますが、それが音として聞こえるのですが、その波形をライトペンで書いてしまうことが出来るのです』

と、先生は画面上でペンをなぞりながら何やら波形を書いて行きます。。。

 

 

オッドアイ猫それにしても先生超楽しそうですねっ(笑)

 

『今、描いた波形は、最初がコップの音で、最後の余韻の辺りに描いてみました。』

 

そして、コンピューターを操作して、そのコップの波形と、ドローイングして描いた波形を演算させてならして行きます』

 

そして、出来上がった波形を確認してから鍵盤を弾くと、確かに最初の叩き始めがコップの音で、その後クセのあるシンセの音に変化しています。

 

オッドアイ猫先生もおっしゃっていましたが、画面上で見た目にギザギザの波形を描くと、音もそれに似たギザギザの音が出ますねっ。

 

いわゆるアナログシンセのオシレーターで言う『ノコギリ波(鋸歯状波)』の様な音がします。

 

『この様に録音した波形を変化させるだけでなく、最初から波形を描くことも出来るのです。

ですから、いくつかの現実の波形を覚えておいて、次に似た音を創りたい時には、それに近い波形を描いてしまえば良いのです。

 

そうなるとですね、僕が10年前から一生懸命コードで繋いで作った音も、最終的に欲しい物は波形ですから描けば良いんですよ(笑)』

 

ただ、なかなか目で見る波形と音のニュアンスが一致しなくてね、それはそれなりの訓練をしないといけないんですよ。

 

簡単には”いわゆる楽器としての音”にはならないと思いますね。

でも決して不可能ではないですね。

 

自分が子供の頃、木ぎれを拾って叩いて音を出していたように、最近の若い人達は小遣い程度でパソコンを買って音を出すことが出来るんですよね』

 

オッドアイ猫いえいえ、おそらくまだ、このころのパソコンはとてつもなく高価で、先生以外の普通の人は買えなかった思いますよ~(笑)まあ、何千万円もするシンクラビアよりは安いですけどね~~(笑)(モニターの上にKORG MS-50だっ!)

 

 

『自分達は、楽器というとまず、歴史の長いバイオリンとかピアノを連想してしまいますけど、これからの子供達は、そう言う先入観無しに、生まれた時既にこういうデジタルの楽器があるわけですから、今までとは違う音楽の演奏と作り方が出来ると思いますね。

 

オッドアイ猫そして、先生は今度は左側のモニターを指しながら。。。

 

そうです、これが、更にお高くて有名な”シンクラヴィア”です!

 

基本システムで数千万円、フルセットで1億はしたと言われているワークステーションです!

 

『作った音はこちらのバンクに。。。オーケストラで言う”楽屋”に保存しておくのです。

 

こちらはいわゆる楽員の控え室ですねっ。

 

今、ここに別のファイルとして、この”訪問インタビュー”の演奏ファイルがあります。

 

名前は一応”訪問B”としてありますが、これが演奏のファイルです

 

そして、この楽員を一人一人呼び出して演奏させる事が出来るのです。

 

斎藤

『どんな名前が入っているのですか?』

 

 

冨田

『ここにはですね、ストリングスの1.ストリングスの2、グロッケン、イースタン、ホルン、クラビネット、ピアノ、オカリナと並んでいますが、もちろん、実際のピアノとかの音とは違うのですが、一つの目安として表示させています。

 

それでは、一つ一つ音を出して行きましょう。。。まずピアノから。。。』

そして先生は、インベンションの音色をいろいろな音に代えながら演奏していきます。

『じゃあ、これを”オカリナ”に代えてみましょうか。。。そして次は”イースタン”ですねっ。。。。そして次はグロッケンですね。。。。』

 

『と言うことは、今作った音をここに蓄えておいて、それを随時呼び出すことが出来るのです。

こう言うことは、今までのアナログ時代ではまったく出来なかったことです。

今やったような音色を代えながら演奏すると言った事は、5年前なら3時間くらいかかりました』

 

オッドアイ猫つまり、モーグの大きなモジュールシンセで音を作っても、次の音を作る時は、一端ケーブルを外して、また一から音を作っていかなくてはならないので、それを繰り返して行って4音色の音を切り替えて演奏するのに、3時間位はかかるとおしゃっているのです。

『本当に5年くらい前までは、3時間くらいかかった事が、今はコンピューターの発達によって一瞬で出来るようになってきたのです』

 

オッドアイ猫このような感じで、世間一般的に”冨田勲”と言うのは”アナログシンセの王様”みたいなイメージがあると思うのですが、それだけではなくて、アナログの良さも理解しながら、最新テクノロジーを搭載したシンセや機械も好奇心を持って取り入れて、音楽に生かしていたとても先進的な考えを持っていた方なのです。

 

斎藤

『それでは、コンピューターに数字として覚えさせておけば、瞬時に引き出すことが出来るんですね。

そうなりますとピアノでしたら、鍵盤を叩く時の強さや、バイオリンでしたら弦を押さえる人間の微妙な感覚とかは、機械で言うとどのような形で表現するのですか?』

 

 

冨田

『今、一番便利になった事は、以前は新しい音を作る時に、せっかく作った前の音をバラさなくてはいけないと言うことが、デジタルでは解消されましたが、それでも音を作るためにはそれなりの苦労は必要だと思います。

微妙なアタックとか余韻とかは、数字で置き換えてコンピューターのキーボードで入力していくのです。

 

デジタルになってから、過去に作った音をすぐに再生すると言うことは簡単になったのですが、やはり”音作りの苦労”と言うのは依然として変わらないですね。

そして、音色が出来たとしても、それを演奏させなくてはいけないですよね。

 

その演奏も楽譜の譜面通りにコンピューターに打ち込んだとしても、積み木を並べた様で音楽的にはつまらないものになってしまうのです。

“コンピューター・ミュージック”と言うのにはそのような物もあるのですが、どうもそう言う音楽は僕は好きではないんですよね。

 

音から音へと移る間とそのタイミングが、同じ4分音符でも違うんですよね。

だから打ち込む時に基本の48や96から数字を少しずらしてあげるんですよ。

その辺の数字の選び方に演奏のコツが出てくるんですよ。

これがね、バイオリニストがフレットの上で指を動かすのと一緒で、その論理的根拠が無いんですよ。

あくまで感覚の問題ですから、数字を選ぶ時になぜこの数字を選ぶのかと言うことは、別に決まった根拠はないのです。

 

ですからバイオリンで言えばハイポジションに行く時に、なぜその音を押さえたのかと言うことと、打ち込むときに”なぜこの数字なのか”と言うことは非常に似ている所があります。

ですからデジタル時代になっても、その辺の”カン”と言うのが必要になってきます。

そこに扱う人間の個性みたいな物が出てきますね。

 

ですからコンピューターが出てきて、我々が一見音楽作りが楽になったと思うのは錯覚で、楽になった分イージーな入力の仕方をすると説得力のない音楽になると思います。

ポルタメントにしてもそうです、均等に変化して音が上がっていくものもありますが、中には。。。』

 

 

オッドアイ猫ここで、斎藤さんが『ポルタメントとは?』と質問します。

 

冨田

『ポルタメントとは、例えばピアノの場合は階段的に音が変化しますが、バイオリンとか日本の笛のように”フワッ”と音が変化する時がありますが、それがポルタメントです。

特に日本の尺八の場合にはそれが均等に変化せず、元の音から次の音までの間にいろいろ細かく変化する物もあるのです。

 

ですから、楽器の音色や演奏の仕方に合わせて、その微妙なニュアンスを数字に置き換えて入力していくのです。

ただ、漠然と尺八や篠笛の音を真似して入力したとしても、やはり本物を吹いた方が的確な音が出ると思うのです。

真似をしても意味は無いと思うのです。

 

つまりこのように便利な時代になっても、人を説得するような音楽を作るためには、便利になった分何らかのツケがどこかに回ってくるのだと思います。

そのツケは自分で何とか解決しないといけないと思います。

おそらく音楽だけでなく、コンピューターグラフィックやその他の分野でも一緒だと思います』

 

 

斎藤

『こうやって壁のシンセサイザー見てみると、一見”冷たいだけの機械”のように見えますが冨田さんからすればそうではないんですよね?(笑)』

 

冨田

『はい、そのようには見えないですが。。。(笑)

 

最近”シンセサイザー的な音”と言うのが出てきて困った事になったと思っています。

このような便利な時代になったのにもかかわらず、業者(楽器製造会社)がいろんな音をプリセットしてしまって、ボタンを押すとその音が出てくるんですよ。

ですから、そのようなシンセサイザーを使いますと、誰がやっても同じような音になってしまうんですよ。

 

本当は音作りはものすごく奧が深くて、元から腰を据えて音を作っていくと、それぞれの扱う人の個性みたいなものが出てくるんですよね。

そう言った意味ではシンセサイザーは、今までの楽器と何ら変わったところは無いと思います』

 

 

オッドアイ猫ここで、バッハのインベンションが流れて今回の訪問インタビューは終了となります。

今回もとても内容の濃い、良い話が聞けました。

では次回も楽しみにしていて下さいねっ♪爆笑 (文字制限でもう書けません!笑)